初期研修先選びは、医学生の皆さんにとって重要な選択です。
とは言っても
- ハイポかハイパーか(忙しいか忙しくないか)
- 大学病院かどうか
- たすきがけかどうか
- 都市部か田舎か
- 給料はどうか
- 専門科はどうか
- 当直回数はどうか
などなど、検討すべき項目が多岐に渡り過ぎて、容易に決めきれないですよね?
僕もそうでした。
今となっては、独自のキャリアを自信持って築いている僕ですが、学生時代や初期研修時代は大いに悩みました。
そんな中で、今回は「初期研修先選び」について徹底的に検討します。
初期研修先の選び方1、忙しさ
初期研修先の選び方の1つに、仕事の忙しさがあります。
いわゆる「ハイポ(ゆるい)か、ハイパー(忙しい)か」です。
なぜか昔から
ハイパーな研修病院で研修する事=良い事
という考えがある気がします。しかしながら、僕はこの考え自体は間違っていると思います。
初期研修、ハイポ(ゆるい)それともハイパー?
まず初期研修の最大にして最重要の目標は
- 初期研修を無事終わらせる事
です。
この目標を達成させる上で、邪魔になるような要素は排除すべきです。
ですので例えば
ちょっと無理してハイパー気味の初期研修先を選んだら、うつ病になって初期研修修了が危ぶまれている
というような事態だけは、避けるべきです。
つぶれたら意味ないですよ。
自分の身の丈以上にハイパーな病院は、選ぶ必要がありません。下手なブランド意識や、自分を少しでも優秀に見せようとする心は身を滅ぼします。
とはいえ、ハイポ過ぎる病院だと退屈でつまらない、という人もいるでしょう。
そういう方は、病院見学時の初期研修先の医師に以下の項目を訪ねてみましょう。
- 毎日何時くらいに病院を退勤しますか?
- 土日出勤はどれくらいありますか?
- 週何回くらい、飲みに行く時間とかありますか?
概ね、これで自分が耐えられそうかどうか、判断できるのではないでしょうか。
例えば
毎日21時に退勤、土日は必ず回診をして、飲みに行くのは週1も行かない
という病院であれば、結構キツいと思います。
実際に初期研修を行っている先生を見て
など、感じ取る事ができるはずです。
初期研修先の選び方2、大学病院
初期研修先の選び方の1つに、大学病院かどうかという要素があります。
大学病院で初期研修をするのかどうか、大学病院を利用した「たすきがけ」にするのかどうか、という要素も検討事項です。
初期研修における「たすきがけ」とは
初期研修における「たすきがけ」とは、初期研修2年のうち一部を大学病院、一部を市中病院で行う初期研修の事です。
概ね大学1年、市中1年の組み合わせです。
市中病院は、当然ながら大学病院の関連病院です。
時間的な振り分けがどうなっているのかは、大学病院のプログラムに依存します。1年大学、1年市中というスタイルもあれば、大学の期間が長かかったり、希望に合わせて市中の期間を長くしてくれるプログラムもあります。
初期研修を大学病院でやるメリット
初期研修を大学病院でやるメリットはたった1つ、入局しやすい。これに尽きるでしょう。
今時出身大学どうこうはあまり関係ありませんが、やはり人気の大学病院のプログラムは席の奪い合いです。
都内の某大学病院とかですね。
そういう人気のある大学病院のプログラムに、初期研修が終わって入りたいと思った時、「席の奪い合いにおいて有利に働く」というのが大学病院で初期研修を行う事のメリットです。
逆に、そういう人気のあるプログラムに入らなければ、あまり大学病院で初期研修を行うメリットは無いかもしれません。
初期研修先の選び方3、給料
初期研修先の選び方として、給料という要素もあります。
この辺りのバランスをどう取るのか、という所が重要です。
例えば当直代。
初期研修先の給料を調べる上で、重要なのが「時間外手当込みなのかどうか」です。
手当込みで40万/月なのと、手当無しで30万/月、当直が月5回だとすれば、1回あたりの当直代は約2万円です。
実際に働いてみるとわかりますが「1回の当直代がどれくらいなのか」というのは結構モチベーションに影響します。
1回5000円とかだと、とてもやっていられない気持ちになります。
他にも、時間外勤務の給料がどれくらい出るか。
仮にどれだけ忙しく、時間外勤務が多くても、その分給料がしっかり出るのならば、割と気持ち的にはモヤモヤせず仕事ができるんですよね。
ですので
- 当直回数
- 当直代
- 時間外勤務代
あたりはしっかり調べて、わからなければ質問しておきましょう。
初期研修医で給料1000万?
最近は初期研修医の給料が1000万越えしている病院も、ちらほら見かけます。
しかし安易に飛びつかない方が良いと僕は思います。
なぜなら
- 初期研修2年の数百万なんて誤差
- 金額で釣らないと初期研修医が集まらないという事は…
という事です。
1000万超えというと、大台に乗って嬉しいかもしれませんが、はっきり言って誤差の範囲です。
2年で数百万の差が生まれたって、大した事ありません。
金で初期研修医を釣らないと、初期研修医が集まらないような病院。
つまり、まず田舎です。
次に、金で釣られた研修医が集まる病院。
研修医のメンタリティが似ている気がしませんか。それが気にならない、むしろプラスだと言う人なら良いでしょうが、行ってみたらなんか違った…と後々後悔しないように。
初期研修先の「穴場」を見つけるという事
初期研修先病院の「穴場」を見つけようと頑張っている医学生が、たまにいます。
そもそも穴場って、一体何だよって言う話ではあるのですが、仮に見つけたとしても、ネットで情報を拾い放題なこの時代、ずっと穴場な病院なんてありません。
また、それほど条件が乖離している事も、ありません。
突出して「穴場」な病院なんて、無いです。
ありもしない「穴場」病院を探す事に、学生時代の貴重な時間を使うのは非常にもったいない。やめましょう。
初期研修先の選び方4、専門科
初期研修先選びの中で、無視はできない程度に重要なのが専門科の偏り。つまり
という質問に対する答えですね。
これに対する答えは、んー難しい。
まず言えるのは、あくまで今「なりたいと思っている科」は、将来的に変わる可能性があります。
僕も学生時代から思っていた科とは違う科を選びました。
ですので、それ1つに絞って一極集中、というやり方はある意味ハイリスクかなと思います。
- やってみたら違った
- 別の科が面白くなった
という事は、結構あります。
しかしながら、その「ぼんやりとなりたい科」が無い病院は、初期研修先に選ばないようにしましょう。
初期研修中、流石にローテできない科になろうとは、なかなか決断できないはずです。
最終的な判断を間違えてしまう可能性が高まるので、そのような条件の病院は避けましょう。
初期研修をしない、受けないという選択
初期研修を最初からやらない、受けないという選択もあります。
この道を選ぶと、基本的に自由診療しかできません。
という意気込みの人もいると思いますが、僕はオススメしません。
なぜならば、もし仮に自由診療の世界で何かがあった時の、保険が無いからです。
医師免許は、生活のセーフティネットとしての役割があります。
医師免許があって、医師として広く働く事ができれば、まず飢え死にするような事にはならない。
これって凄い事だと思うんですよね。
ものすごいお金持ちになれるかどうかは置いといて、少なくとも生きていける。
そのセーフティネットとしての役割は、初期研修をやらない事によって失われてしまいます。
これは勿体ないです。
何かに挑戦したり、大きな決断をするにしても、やはりセーフティネットを持っているのは大きいです。
とはいえ、実際に働き始めて心を病んでしまう人も、たくさんいます。無理は禁物です。
自分の限界を見極めましょう。
初期研修、どこでやっても一緒説の真相
たまに
初期研修はどこでやっても一緒
という声が聞こえてきますよね。
これは半分正解で、半分間違っています。
どんな有名な研修病院に行っても、本人の意欲が足りなくて、不勉強だと意味がありません。
そういう意味では、本人の意欲ややる気が重要です。
しかしながら、そもそも「やる気」が湧いてくる病院とそうでない病院があるとしたら、どうでしょうか。
例えば、挿管にバリバリ意欲的な研修医がいたとします。
有名研修病院で、上司にも恵まれ、しっかりと理論立てて教えてもらった上で実践を重ね、救急外来でも挑戦する環境。これがあれば、間違いなく意欲的な研修医は成長するでしょう。
しかしながら、仮に田舎のハイポな病院に行ったとして、挿管なんて滅多にやらないとします。
初期研修医の意欲がどれだけあっても、これでは意欲が続きません。
初期研修はどこでやっても一緒
という言葉の真相は
(意欲が無ければ)初期研修はどこでやっても一緒
という事であり、意欲がある場合は「意欲を満たす事ができる病院に行くべき」です。